どちらが多い?SEの客先常駐におけるメリットとデメリット

    2017.07.21

「客先常駐はツラい」「派遣と変わらない」「会社に属している感覚がない」

といったネガティブコメントばかり並びますが、

実態としては・・・、その通りです!

客先常駐なんて基本的にはいいことありません。自社でともに成長していける環境にいた方がいいに決まっています。

ただし、IT業界の今の仕組みとして客先常駐の企業に勤めざるを得ないのは仕方のないことなのです。

なぜなら、全体の約9割は客先常駐タイプのIT企業だから。自分のポテンシャルで1割に入る自信はありますか?

ましてや未経験からSEにチャレンジしようという人であれば、まずは客先常駐になってしまうのはむしろ自然で、そこからどうやってステップアップしていこうか考えると転職活動はスムーズに進みます。

そう、客先常駐だからと言って悪いことばかりでもありません。が基本的にはいいことはないという話ですね。

それでは、客先常駐のメリット・デメリットについて見ていきましょう。

客先常駐とは?

そもそも客先常駐とはなんぞやという方のために説明すると、

システム開発を自社で行わず、他社のシステム開発をお手伝いするために他社のオフィス内に出社して仕事をする勤務形態のことを言います。

1ヶ月の中で自社に出社する日は1日あれば多い方で、基本的には他社に直接出社して他社の勤務形態に合わせてタイムカードを切り、直帰します。

世の中のIT企業の中でも9割は客先常駐と言われており、いかに歪んだ業務形態になっているかは容易に想像できるはずです。

客先常駐のメリット

客先常駐にも一応メリットはあります。

いろんな会社を回るので視野が広がる

自社で開発している人は、自社内のノウハウしか獲得することができません。金融系のシステムを作る会社であれば、金融系のシステムだけに詳しくなっていくことでしょう。

一方で客先常駐であれば、他社のシステムを開発します。配属先は1年から3年のスパンで変わるので、金融系のシステム会社に行くこともあれば、メーカー系のシステム会社に行くこともあります。

1つの分野の知識で頭が凝り固まるのではなく、常に新しい刺激をもらいながら勉強していける環境にあります。そういった幅広く知識を吸収したい人にとっては向いているといえますね。

入社しやすい

今のIT業界は、史上最高レベルで人手が足りていません。

(参考→ IT業界の人材不足

社員を客先に送る会社も、「もっと人をくれ」と言われている状況で、経験者が面接に行こうものなら即日採用連絡もらうレベルの人手不足っぷりです。

未経験でIT業界を狙う人は客先常駐であれば、すぐに願いが叶います。客先常駐でSEとしての業務を覚えて数年後、ステップアップの転職を行うというプランが現実的で、未経験からSEになろうと考えている人はそこを狙うべきだとわたしは思います。

未経験からIT業界入るなら狙い目な客先常駐

SEは経験値がものを言う世界ですので、未経験者が考えるべきはいかに現場での経験値を貯めるかです。

大手企業のオフィスで仕事できる

自社のレベルは低くても、常駐先が大企業とうケースは多々あり、セキュリティがしっかりした綺麗なオフィスで仕事をすることができます。○ニーで仕事しているとか、○ナソニックで仕事をしているなど、字面だけであれば、「あら、すごいところで仕事をしているのね」という思わぬ高評価をいただける可能性もあります(主に合コンなどで)

社食もあったり、オフィス内にコーヒーメーカーがあったりと、職場自体の環境は整っているので、そこの部分だけにフォーカスすれば満足できるかと思います。

客先常駐のデメリット

客先常駐のデメリットです。

派遣と一緒

仕事の仕方は派遣と何も変わりません。

「行ってくれ」と言われた会社に行き、仕事をして、そのまま家に帰る。

会社に勤めているのに、自社に行く頻度は、月に1回あるかないか。

別に派遣が悪いという話ではなく、派遣と同じ形態だと会社に勤めていることの良さがあまりないですよね。

  • チームで一丸となって成長していく
  • 自社内でノウハウを共有し合う
  • コミュニケーションを図りやすい

などなど。勤めているのだけれど、どこか他人行儀というか、固定給と福利厚生がある派遣みたいな感じです。

そちらの方が働きやすいというのであれば、問題はないですが。

自社に帰らない

自社に寄ることってほとんどありません。

あるとすれば、何かのイベントのタイミングとか。そもそも客先常駐が基本となっているので、社員が入りきるほどオフィスが広くありません。

会社に勤めているという意識が低くなり、先程の派遣の話ではないですが、社員同士でコミュニケーション取る機会がなく、どこに勤めているのかわからないような状態になります。

難しい言葉で言うと「帰属意識がない」という表現をするのですが、そういう会社は何かあった時に脆く崩れやすいですよね。

周りが全員お客様

精神的にも図太くないとかなり疲れます。

客先常駐では、同じプロジェクトに配属されていても完全に相手の方の立場が上です。

「常駐してやっている」のではなく、「常駐させてもらっている」のですから。

つまり、常駐している自社のメンバー以外はわたしたちからすると全員お客様です。

気を使いながら仕事をしなければならない環境は精神的にかなり疲れます。精神的な強さが求められます。

残業推奨

客先常駐のダメな構造として、働いた時間に応じた報酬が支払われる点です。

会社の利益はわたしたちが働いた時間。つまり、残業をたくさんしてくれたほうが、会社としては儲かります。

中には「もっと残業しろ」と言われる会社もあるそうです。

日本の企業のダメなところを凝縮したような報酬形態になっているのが客先常駐の企業なのです。

成果にフォーカスせずに、時間での計算に慣れてしまうと、なんの生産性もないただ会社に長くいるだけの人間になってしまいます。

自分の価値を高めたいのであれば、客先常駐で働くにしても、自分くらいは生産性を意識した働き方をするようにしましょう。

帰りづらい

お客様が残業しているのに、お世話になっているわたしたちが先に帰っていいものか・・・、という心理が働き、仕事が終わっても帰りづらいです。

しぶしぶ「何かお手伝いすることありますか?」と聞いてしまい、結局残業してしまいます。

常駐先の会社が生産性を意識したキビキビした仕事をする会社ならいいですが、多くの会社は昔ながらの物理的に仕事の遅い(できない)人間が集まっている会社が多いです。

他の人の仕事が残っている状態で帰るのは評価にもつながるので難しい部分がありますが、自分の仕事が終わっているのであれば割り切って帰ることも大事です(自分のためにも)

飲み会を断りづらい

常駐先の社員は全員お客様です。

飲み会に誘われたら非常に断りづらいです。接待する感覚で参加しなければなりません。

あまりに頻度が多いようなら、何回かに一回は断るといったことも考えながら参加しましょう。有益な話をしてくれる人の飲み会はむしろ積極的に参加したいところですが、たいていの飲み会は、どうでもいい話、セクハラに近いシモネタ、おっさんの自慢。苦痛でしかないので、断る理由のレパートリーばかり増えていきます笑

無駄に資格を取らされる

SEにとって必要な資格はありません。しかし、ほとんどの企業が積極的に資格の取得を推奨してきます。

理由はシンプルで、他社へのアピールになるからです。

「弊社は従業員の9割が基本情報技術者試験に合格しています!」と言えれば、

「なるほど、最低限のスキルは持ってそうだな。じゃあ我が社に数名派遣してくれないか。」となりやすいですよね。

対外アピールのためのくせに表向きはわたしたちのためを装って「資格を取れ!」と言ってくる様子がウザイです。

ただし、取得手当があったりするので、取っておいて損はありません。次の転職時にアピールできますし。

SEの35歳限界説

SEの35歳が限界という説を聞いたことがあるでしょうか?

これは派遣や客先常駐のSEに対しての発言です。

35歳になると知識がついてきて、自分のやり方も確立してきます。考え方が頑固になる人もいるでしょう。

エンジニアを引き受ける側の企業としては、自分のやり方があって考えを曲げない人は扱いづらいのです。それよりもこれから企業の色に染まってくれやすい若い人を引き入れたいと考えます。

また、エンジニアの単価は一般的には年齢に比例します。35歳と25歳では雇う金額が大きく異なります。

安く、素直な若い人材を雇いたいと考える傾向が、常駐先の企業にあるために、年を重ねたエンジニアは派遣の現場からは消えていっていくのです。これがSEの35歳限界説になります。

とは言っても、まだ35歳は生き残っている方です。そのまま40歳、50歳になってしまうと怖いですね・・・。

未経験からのSE転職は「20代の内に!」とわたしが言っているのは、こういった背景があります。35歳までに客先常駐でない企業に転職するためには20代でどこかしらのIT業界に入って経験を積んでおく必要があるのです。

なぜ客先常駐という勤務形態が生まれたのか?

なぜこんなにも客先常駐のIT企業が生まれてしまったのでしょうか。

その背景には、個人情報が関係しています。あと儲けも・・・。

システムの内の一部を担当

数十年前は今ほど客先常駐の企業は多くありませんでした。他社のプロジェクトメンバーの一員となり仕事をする形態には変わりなかったのですが、

当時は他社に行くことはなく自社で仕事をしていました。

離れ離れでどうやってシステムを作っていたかと言うと、システムの担当する部分の一部をデータでもらって自社のパソコンでその部分だけを開発していたんですね。

客先に行こうが、自社で行おうがやることは同じなので、わざわざ客先に行って仕事をする必要はなかったのです。

客先も客先で来られるとパソコンやらデスクならを用意しなくてはいけないので、お互いにとってやりやすい方法で働いていました。

個人情報保護の強化

2005年4月から個人情報保護法が動き出し、それまでデータで簡単にやり取りしていた個人情報に関わるデータ(直接の個人情報でなくても、個人情報にアクセスするシステムなども含む)を他社に送ることができなくなりました。

困った依頼元の企業は「自分の会社に来て仕事してくれないか?」という提案をするようになるんですね。

それまでデータで依頼を受けていた企業も、仕事がなくなるよりは客先にお伺いして仕事もらうようになります。今でいう客先常駐の仕組みですね。

IT企業の客先常駐がこれほどまで増えた背景には時代の変化がありました。

あと経営リスクが少ない

個人情報保護法は1つのキッカケであったわけですが、

客先常駐がこれだけ流行る背景にはもう1つ。経営陣の怠慢があります。

要するに、自社でシステムを開発するよりは、大きなシステム作っていて人手が足りない企業に人を派遣したほうが、リスクが少なくて儲かります。

わざわざ初期費用を投資して成功するかどうか分からないシステムを自社で作りあげるよりは、

確実にお金がもらえる派遣に人を使ったほうがはるかに経営は楽です。

そういった楽に儲けられる仕組みが今のIT業界にはあり、そのせいで人売などといった悪い表現がSEにはあるんですよね。

SEを雇う会社にまともな会社が少ないのは本気で企業努力をしようとする気のない会社が多い裏返しでもあります。

客先常駐のIT企業は入り口だと割り切れ!

客先常駐のSEを最終的なキャリア目標に考えている人はいないでしょう。

惰性で働き続けている人は多いでしょうが・・・。

わたしの客先常駐の捉え方は、IT業界への入り口です。

つまり、入社するにしてもステップアップを前提にします。

SEという職種は、経験値で評価されます。いくら家で勉強していてもダメです。現場でどれだけ働いていたか、が評価の軸となります。

未経験からSEを目指す方にとって最大の参入障壁は「経験値がないこと」。いきなり大手なんてよっぽど別のスキルが秀でていないと厳しいです。

現実的に考えると、入りやすい客先常駐のIT企業をまず選び、数年我慢してSEのキャリアを積んだ後に大手に転職する。このキャリアプランを描いて客先常駐に入るか、ただ漠然と転職してしまうのかでは数年後の成長に大きな差が生まれます。

未経験からのSE転職では将来を見越しての戦略的な転職を意識しましょう!

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